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「拡大教科書」のこと、知ってください。

◉「拡大教科書」ー 文部科学省の検定を経た教科書の文字や図形を拡大して複製したもので、弱視の子どもたちが使用する教科書です。教科書の文字などを拡大するため分量が増えて、一冊の検定済教科書が数冊の分冊になることも あります。平成17年度には、全国で約600名の子どもたちに、約9,000冊が無償給与されています。
個人によって見え方の異なる弱視の子どもたちの一人一人のニーズに応じ、全国のボランティアグループの皆さんのご協力によって製作されるほか、民間の 拡大教材製作会社からも出版されています。(文部科学省HPより抜粋)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kakudai/mailmaga/06100311.htm

義務教育の教科書は無償供与されるはずですが、特殊教育学校でなく通常学級に入学した子どもには有料になっていました。これは「教科書会社の発行している教科書が、弱視の子どもには読めない普通の教科書」しかなく、保護者の負担でボランティアが作った拡大教科書使うことを余儀なくされていたからです。
以前から問題にされていましたが、平成16年度からはボランティアの拡大教科書製作費を国が負担するようになりました。今では一部の教科書発行社からも出版されていますが、ほんの少しだけです。ボランティアによる手作り教科書を可能にしているのが、富士ゼロックス社の社会貢献で全国でカラー複写機を無料使用でき、2005年度には約70のボランティアグループに55万枚の拡大カラーコピーを無償提供しています。
「拡大教科書」のこと、知ってください。_c0167961_127243.jpg
小学理科
5年生用
1ページを
2ページに
拡大

見本をスキャナーで取込みパソコンで、A4サイズで制作。個人別に合わせたサイズに拡大カラーコピーして手作り製本する。文字を18~28くらいに大きくし、レイアウトや色の重なりなども変え、図や写真も鮮明にして見やすく作り直すので、すごく時間がかかる。
「拡大教科書」のこと、知ってください。_c0167961_11595329.jpg
所属しているNPOボランティアグループ「ぽこ・あ・ぽこ」では、今年39名の子どもさんへ14教科合計で約1050分冊製作。私が担当したのは中学美術1・2・3、小学理科5上下、小学図工3。


◉障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律が成立しましたが、、。

「拡大教科書」のこと、知ってください。_c0167961_1202326.jpg国内には普通学校に通学している弱視の子どもは、約3,000人くらいと言われておりボランティアがいくら頑張っても2/3くらいの子どもたちには拡大教科書は届けられません。
アメリカでは教科書会社に拡大教科書の発行が義務付けられていて、日本の遅れが目立っていましたが、今年6月議員立法で拡大教科書に関する法律が成立しました。
「拡大教科書の給付は国が責任を持ち、教科書会社は拡大教科書発行の努力をしなければならない」(平成21年度用検定教科書より実施)
視覚障害は一人ずつの見え方にはすごく個人差があり、標準的な拡大教科書で間に合わない子どもには、やはりボランティアの手作り拡大教科書が必要でしょうし、今は手つかずの高校教科書までカバーされるか分かりません。
ボランティアの力だけではとても足りない現状を、まず知ってもらう必要があります。(新聞は法成立への毎日新聞遠藤さんの解説記事)
by yamana-4 | 2008-10-14 17:39 | 教育
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