路線バス乗車中の車イス固定について

◉「固定問題の取り組みと現状」
東京大学の鎌田先生を委員長とする研究会が行われ、時速40kmでダミー車いすによる
衝突実験を行った結果、車いすは固定しないと吹っ飛んだとして「固定は必要である」
との結論に至りました。
「車いすの公共交通機関利用時における乗降及び車内安全性に関する研究報告 書」
 平成 20 年3月交通エコロジー・モビリティ財団
これに従って国交省とエコモ財団などでバスの固定方法の検討が行われ
現行の標準ノンステップバスの3点固定方式が導入されました。

国交省は全国のバス事業者に対して「車いすの固定をするよう」に指導する
文書を出していますが、全国各地で運行されているバスの固定方法は様々であり
運行中の車内で他の乗客もいる中で「短時間で有効な固定」を運転手が行うのは
とても難しく、多くの場合は「固定したことにしておこう」状態であり、
全く固定をしていないバスから、固定を乗車の条件としているバス事業者まで
バラバラなのが現実です。
(片輪固定装置とベルト、事故の時有効かは疑問で電動車いすはほとんど使えない)

一般的に東京や大阪など都市部のバスは固定を条件とせず、地方のバス事業者ほど
固定をするように運転手を教育している傾向があります。
バス事業者が固定が必要とするのは、車いす乗客の安全を確保というより
「万一の事故の時、運転手の責任を問われないよう」との観点が重視されていると
考えられます。

「固定の問題点」
1、どの車いすにも使える有効な固定方法がない。
 国交省が決定打としている3点固定は、実際に運行しているバスで有効に使えるかは疑問。

東京都交通局はhpに下記のように記載しています。
「車いす固定方法の改善:バス車内における車いすの固定をより迅速・確実に行えるよう、
『前向き・三点ベルト式固定方法』の改善を行いました。具体的には、床の固定金具と、
金具と対になる固定ベルトを色分けするとともに、ベルトのフックに使用時の向きを
表示するなどにより、固定に要する時間が大幅に短縮しました。
(【改善前】5~9分 ⇒【改善後】3分)
今後導入する新車も同様に改良する予定です。
低コストで、安全性の向上と定時運行の確保に大きな効果を発揮しており、
他のバス事業者にも普及が進みつつあります。」

しかし、実際の運行時に3本のベルトを緩まずに均等に締めることは、ほとんど不可能に近く
事業所などが使っている車いす移送車の「ウインチで引っ張る3点固定方式」以外は、
3点固定は路線バスでは非現実的ではないかと考えられます。
訓練ではできても、実際の運行時に確実に3点固定ができた運転手に遭ったことがありません。

2、固定をバス乗車の絶対条件とすると「乗車拒否」につながる。
 固定はどの車いすの人にも必要な訳ではなく、必要と申し出た人だけで良いはずですが、
少し変わった形態の車いすは固定が難しく、名鉄バスの事例のようなことが起ったり、
「固定ができないから乗せない」とストレートに乗車拒否に繫がるのが問題です。
全国のバス乗車で乗車拒否理由の最も多いのが「固定できないから」なのです。

しかし、バスは道路運走法により
「合理的理由を示さずに乗車を断われない」
「特定の利用者だけに不当な差別的扱いをしてはならない」とし
旅客自動車運送事業運輸規則では
「旅客自動車運送事業者は、旅客又は公衆に対して、公平かつ懇切な取扱いをしなければならない」
としており、固定の強要は上記の規定上は問題があると近畿運輸局は見解を示しました。

3、有効な固定の方法
a.「ヨーロッパ方式の背当て固定」
東京都交通局が実証実験を行いましたが、結果が公表されているか分りません。

b.帝産湖南交通バスの運転手研修で、運転手と考えて最善とした
「1本のベルトで車いす全体に廻して締める固定」
身体にベルトが掛からないよう、車いす全体にベルトを廻してゆるみの無いように締め付ける
と前後左右の揺れやブレーキに対しても安定的に固定でき、短時間で行えるとの結論に至りました。

また、写真と逆向きに「車いすの後部をバスの固定部に接しておく」と、急ブレーキにも耐えられ、
状況によっては横向きでも、固定部に接しておくのが安全です。
しっかり掴まることの出来る人は、車いすの一部をバスの固定部に接しておけば、ベルトなしでも
かなり安全に乗車できるのです。

国交省や固定研究会の有識者の方達は「固定が絶対必要」と考えられており、バス事業者は事故の
が起こった時に運転手の責任を問われないためにという側面の方が強く、個々の車いすユーザーの
事情や能力や、車いすの形状が一定ではないなどの実情は考慮せず、ほとんど無意味な固定を強要
していることが現実です。

固定ではなく「転倒を防ぐこと」と考えれば簡単になります。
車いす全体に横ベルトを回し、バックルで締めればワンタッチで転倒防止は出来ます。
窓側に車いすを密着したら転倒はドア側にしか起きないし、急ブレーキには車いすの横か後ろを
バスの固定部に密着して置けば、横ベルトだけで十分安全です。
有効で短時間にできる実用的な固定の方法を研究し、必要な人には固定し、必要でない人にまで
強要しないことが、バスの車いす固定問題の本質であると考えています。


★車輪止めは1輪づつかませると利かないことが多いので、写真のように両輪に掛かる
モノが有効であり、2個別にかませるより短時間で固定できるので、お薦めです。

路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_0463053.jpg路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_0464968.jpg
路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_0471882.jpg路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_0474752.jpg路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_0484060.jpg路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_04911.jpg路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_0491510.jpg路線バス乗車中の車イス固定について_c0167961_049483.jpg
by yamana-4 | 2013-09-25 00:50 | バス・市電
<< 台北交通事情レポート1<バス> 国際福祉機器展で注目した車イス >>