◉建築史的に重要な近代建築作品の取壊しが続いているー経済的合理性だけで判断して良いのか?
もうすぐ大正の名建築の一つ「ダイビル本館(渡辺節)」が取り壊されようとしている。
先の「そごう心斎橋店(村野藤吾)」「ソニータワー(黒川記章)」など建築史的に重要な建築物が取り壊されてしまったように、日本ではヨーロッパのように保存されないのが悔しい。
しかし、都心の一等地にこれだけ容積格差があると、ビル経営者の気持ちも分からないでも無いが、このような場合外国ではどのようにして保存しているのだろうか?
「ダイビル本館」は大正15(1926)年に渡辺節の設計で建てられた、ネオ・ロマネスク様式の大規模なビルディング。同時期に建てられた東京の旧丸ビルが取り壊された現在では、同じ渡辺作品である神戸の商船三井ビルとこのダイビル本館が、大正期の大規模オフィスビルとして現存する最後のものであり、建築史上も近代都市史上も非常に価値が高い。渡辺作品では昭和に入ってからの日本綿業倶楽部が既に重要文化財となっており、ダイビル本館、商船三井ビルも重要文化財級の価値を有する。しかし、関西電力は老朽化(現代の技術では補修補強可能)および土地利用の見地から本物件の取り壊し・超高層ビルへの建て替えを計画しており、歴史的に重要な建築物の保存の見地から論議となっている。(ウィキペディアより)
このビルの10年後に建てられたのが
「そごう心斎橋店」昭和10年(1935年)であり、村野藤吾による近代建築史上重要な建築作品であった。
これより先に、フランス留学を終えた村野藤吾はダイビル本館のエントランスホール部分の設計を行ったと、当時のことを知っている方に聞いたことがある。奇しくも彼が関わった初期の名建築が、相次いで失われるのは非常に残念なことで、大阪にとってだけでなく、世界の建築史上の手痛い損失だろう。
京阪中之島新線開通に合わせて、中之島西部周辺地域の再開発が急ピッチで景観を変えてしまおうとしている。
「そごう」写真:
(右)竣工当時のオリジナル
(左)取壊し前
写真下:対岸の「ホタルまち」付近と、取り壊された「黒川記章:メタボリズム実証建築/ソニータワー」