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危険な階段昇降機をなぜ無理やり使わせる?

◉近鉄名古屋線「津新町駅」で起ったこと、経緯と解決について

 11月17日、三重県津市で近畿日本鉄道名古屋輸送統括部と、要望書を出した「ピアサポートみえ」の「危険なキャタビラ式階段昇降機(チェアメイト)の突然の使用強要をやめ、従来の使い易いスロープと構内横断通路の利用復活を求める」交渉が行われ、支援に行ってきました。
 車イスでの電車乗降では、ホームと改札への通路が車イスで通れるかが、まず問題になります。バリアフリー法では一日乗降客数5000人以上の駅は2010年までにエレベータなどの設置を義務化していますが、資金的な制約などで間に合わない駅などで便宜的に階段昇降機などを使用する例が多くあります。
その中で「チェアメイト=キャタピラ式階段昇降機」は工事が要らず、使い回しが出来るので安易に導入されることがありますが、使用写真のように身体的にムリな姿勢を強いり、振動が大きく不安定で大変恐怖を感じ、落下事故も多数発生している危険な器具なのです。c0167961_1452675.jpg
 近鉄「津新町駅」は1日乗降客が1万2千人を超えエレベータ設置義務駅ですが、優先順位の関係で設置計画が立っていません。以前からチェアメイトが配備されていましたが、ホーム端がスロープで線路横断通路も整備されていて、この方が介助手間もかからずスピーディに利用出来るので、ずっと使われていました。
ところが最近、このような「通路の使用を禁止する」との本社指示が出て、何時も利用している車イスの人は危険なチェアメイトを使用しないと乗降できなくなり、駅員も困惑している事態が起り、急遽交渉となったのです。c0167961_2281628.jpgc0167961_2293459.jpg
•交渉経緯
 要望に近鉄側からの回答「駅員への指導で安全に使用することで継続したい。チェアメイトは使い続ける」と。なぜチェアメイトがダメなのか説明、添付写真と事故などの資料は説得力があり、特に写真は効果的だった。介護者からも身体的に使えない障害者が存在することなど説明し、チェアメイトの使用中止とスロープ経路の利用再開を強く求めた。
 近鉄側は遮断機など安全設備が整った横断通路以外は使用することは出来ない。桑名駅もチェアメイト配備しエレベータ設置までは同様の措置を取り続けるし、他の駅でも駅員誘導の横断通の利用は禁止するとの回答。
 平行状態に陥ったので、視点を変えて質問「何故チェアメイトが安全で皆が使えると確信しているのか、私たちを納得させる合理的な説明を」
説明できる訳なく、やり取りでいろいろ分かってきた。
・駅員誘導を禁止した真意ー人為的ミスによる事故への過剰な恐れ
 =車いす利用者の安全より駅員を守るため?
・チェアメイト10年くらい前から配備されていて使ってなかったのに
 突然使用命令を出したのは=車いす皆が使え安全と単純に思っていただけ。
・駅員誘導での横断での事故例があるのか質問したが知らない=起ったことはない。
 事故発生の危険性はチェアメイト使用の方が格段に多く、会社にとっても危険な判断であることや、バリアフリー対策に後ろ向きだと広言しているに等しい、利用者の身体的精神的ダメージと同様にこの方針変更は近鉄へのダメージとなることなど、よく説明して説得。
・近鉄側の出席者は説得しているうちに、だんだん理解してくれたように見え「社内に持ち帰って検討します」
•再回答
 「構内通路は遮断機がないことから、安全が確保できていないものであり、利用していただくことはできない」
最初から再考する意思は無いようで失望していましたが、三重県ユニバーサルデザイン担当係の要望もあり、うれしい解決となりました。

◉11月20日、近鉄さんから「当社としてはお客様の安全を重視しておりますが、係員を適正配置させ安全を確保したうえで通路使用をさせていただきます」と回答があったそうです。きちんと理解して頂ける資料や写真を作って、社内説得し易くして交渉に臨んだ当事者と、良識ある対応で決定を撤回した近鉄さんの双方に拍手!
上手な交渉のやり方を見せていただきました。

by yamana-4 | 2008-11-20 03:56 | バリアフリー | Trackback | Comments(2)

ハンドル形電動車イスの新幹線乗車問題の進展

ハンドル形電動車イスの公共交通機関乗車問題とは何か(問題の発生から現在に至る経緯と新制度概要、なお残されている課題について)

◇(問題の経緯)
◉ハンドル形電動車イスがなぜ車いすとして正当に扱われて来られなかったのか
 ハンドルで操縦するタイプの車いすも、法律上は型式認定された正規の車いすであり、普通形車いすの乗車を認めている公共交通機関への乗車を拒否する正当な理由はない。 しかし、国産メーカーは利用対象を主に高齢者の移動用機器と位置づけ、車いすとしての用途より「免許の要らない簡便な車」としてデザインし、道路走行をするための大型機種しか開発して来なかった。 このため障害の身体的特性や外出型としての利点から、ハンドル型を選択した利用者にとって必要な「車いすとしての機能」はおろそかにされ、鉄道やバスの乗車を拒否される原因となってきた。
「大きい、重い、取っ手がない、回転半径が大きい、鉄道乗車を想定して設計されていない」などバリアフリー法の概念からはおよそ的外れな理由を挙げられ、バリアフリー法の寸法基準からも利用を想定していなかったなどと言われてきた。
 一方、機能的な外国製使用者や国産使用者でもがんばっていた人たちは、独自に鉄道事業者の理解を得て乗車を拡大してきた。ところがハンドル形を絶対認めないとする事業者もあり、トラブラが多く起るようになってきたので、国交省は平成12年のバリアフリー法制定後の検討課題として、ハンドル形の鉄道利用を取り上げることを決定した。

◉交通バリアフリー技術規格調査研究委員会報告と補装具給付条件鉄道乗車制度(平成15年より始まり「一歩前進」と称された現行制度のもたらしたもの)
 障害当事者代表、メーカー、交通事業者、行政と研究者など関係者による研究会が設置され4回の会議で、ハンドル形電動車イスに関する報告がまとめられた。
◇(報告書骨子)
①市販品は屋外使用を想定し、公共交通機関の利用を想定して設計されておらず、回転半径、重量等の制約から多くの鉄道駅では利用することが困難。
②移動円滑化基準の基本的寸法を満たす回転性能、持ち上げるための取って、手押し切替クラッチ、などを備えた機器開発が必要。
③しかしハンドル形電動車イスを用いている肢体不自由者が公共交通機関を利用できない状態が続くことは望ましくない。
④移動確保の観点から以下の条件が考えられる。

⑴利用者条件:補装具給付されている者 ⑵鉄道条件:エレベータ設置等により段差解消されワンルート確保された鉄道駅(ただし乗降経路、車両内部の制約による利用の可否は鉄道事業者の最終的判断に委ねる)
この報告書を受けて現行の「補装具給付されたハンドル形電動車イスだけが乗車できる制度」が始まった。しかし、JR東海・北海道の2社は全面的な乗車拒否を続けていた。

◉平成16年、JR東海に対しての「人権侵害是正勧告」
 この制度にも加盟せず一律乗車拒否を続けたことに対し、法務省人権擁護局への人権侵害申し立てが受け入れられ、異例の人権侵害是正勧告が出された。以後両社も在来線に限って乗車取り扱いを開始したが、新幹線乗車はかたくなに拒否を続け、従来は乗車できていた山陽新幹線も東海道新幹線との統一管制に移行後は乗車できなくなり、JR東日本も同様の扱いを続けている。
◇(現行制度の問題点)
①補装具給付条件により、自費購入者や高齢者の介護保険利用者、外国人など多くの利用者が鉄道乗車できない。(バスは道路運送法13より条により、合理的理由なしには原則乗車拒否できない)
②利用の可否を鉄道事業者に委ねたことで、デッキ付き車両(特急、新幹線など)の乗車を拒否、バリアフリー法で1ルート整備された駅の利用拒否が行われている。(例 : JR東日本の1ルート整備駅550駅以上に対しハンドル形利用許可駅は244駅)
③条件を上回ることは妨げないとされたが、関西など利用の進んでいた地域で利用拒否の理由ができるなど、利用拒否の正当化に逆利用されることも起っている。

◉第2次「ハンドル形電動車イスの施設利用等に係る調査研究報告書」に基づく改正乗車制度
 (見直し研究委員会)c0167961_12411421.jpg 
 問題の多い現行制度を見直すため関係者による研究委員会が設置され、4回6ヶ月の予定を延長し検討され紆余曲折の末、平成20年9月に一応の結論にいたった。当事者側からの見直し要請の多くは採用されなかったが、現状打破のため不本意ながら譲歩せざるを得なかった。09年6月1日から「改良型ハンドル形電動車イスの鉄道乗車制度」が実施されることになった。
◇(新しい乗車制度の骨子)
①利用者条件
 ・ 補装具給付された者(給付決定通知書、身体障害者手帳の補装具欄にハン ドル形記載)・介護保険レンタル利用者(福祉用具貸与利用契約書)
  今回も、自費購入者や外国人は除外された。
②車いすの条件
 ・ 直角通路の通過(90cm幅直角通路を数回の切替で曲がれる、1m幅直角通路を切替なしで曲がれる)
・180度旋回に必要な寸法が1.8m未満であること。
・ 支援者が動かせるための取って、クラッチを備えていること。
 (以下略)
このような条件をクリアーした車イスを「改良型ハンドル形電動車イス」 とする。c0167961_12414425.jpg
③対象列車条件
・ 新幹線N700系と同等の仕様の列車。
(対象車両は2〜3年内に過半数を超える予定)
④利用資格判定を㈳バリアフリー協議会が行い認定ステッカーを交付する。申請費用は利用者負担。ステッカー添付車イスを「改良型ハンドル形電動車イス」と鉄道事業者は認定し受け入れ、条件を満した車両には乗車扱いをする。
★国産機種で条件を満たす機種は「スズキ・タウンカート」1機種だけ!
◉残された問題
①ハンドル形電動車イスは基本的に法で認定された車イスであり、ジョイステッィク形と区別して良い理由はない。適法な車イスが鉄道乗車できないとしたらバリアフリー法とは何なんだろう。
外国で車イスを区別している例はあるのか?
②新幹線など車イススペースが作られていないのがそもそも問題であり、折り畳み車イスが置けるだけの「車イス座席」は本来の車イス座席ではない。
電動車イスで乗車できる列車を作る必要がある。
これはハンドル形電動車イスだけではなく、車イス全体の問題である。
③ハンドル形電動車イスを特殊な車イスとしてジョイステック形と分け、別の「1ルート整備駅定義」を行おうとしていることを断固許してはならない。
④経産省はいわゆるシニアカー使用者の事故多発対策として、ハンドル形電動車イスを「消費生活用製品安全法による特定商品」に指定しようとしていたが、反対意見を容れてJIS規格に項目を作り対応することにし、別に「安全を考える関係者連絡協議会」で安全をどのように確保するか議論することになった。
⑤新制度を厳密に実施して新たな乗車制限が起こっている。
新制度の条件に適合する外国製機種の認定が何故かなされず、認定ステッカーを乗車の絶対条件にする一部の大手鉄道事業者は「N700系に相当する特急車両は他に無いので、在来線特急への乗車を一切認めない」と、制度を逆利用し始めた!
⑥公共交通を利用しやすい国産機種の開発。
現在、条件に合う国産機種はほとんどなく早急な開発が必要。

「ハンドル型電動車いす問題」は単なる車いすの一品種の扱いの問題に留まらず、パーソナルモビリティ全体から考えなければならない問題であり、日本の車いすや移動についての特殊性を際立たせる問題である。
小手先の改善でなく、きちんと議論し解決を計らなければならないだろう。


☆国交省報道発表
“ハンドル形電動車いす”での鉄道利用の要件などが拡大
~~新たな運用のための報告書がまとめられました~~
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo09_hh_000007.html
by yamana-4 | 2008-11-11 11:18 | ハンドル形電動車いす | Trackback | Comments(0)